人生の中でも貴重な「学生時代」。多感な時期に様々な体験ができる大切な時間である。本業である勉学はもちろん、部活に打ち込んだり、趣味を追求したり、はたまたアルバイトに精を出すのも良いだろう。いやまぁ、かく言う筆者(子守)は家で本を読んだりゲームをしたりと、ずいぶん内向的な生活を送っていたわけだが……。本稿をお読みの現役学生の皆さんには、ぜひとも充実した毎日を送ってほしい。
そんな中でも「日本を飛び出して、世界を体験してみたい!」と考える学生の皆さんも少なくないことと思う。そう「留学」である。筆者が学生の頃よりは留学もしやすくなった昨今。しかしながらいざ実際に「留学」することを考えると「言葉のハードルもあるし、何よりお金もかかるし……」といった問題が立ちはだかることになる。今現在そんな風に悩んでおられる方もおられるのでは? また、お子さんを留学させてあげたいと思いながら、上記のような問題や心配ごとも多い、という親御さんも。
そのようなお悩みをお抱えの皆さん、「熱意」「好奇心」「独自性」がとても重要視され、「『誰でも』『留学』ができる」、そんな見逃せない制度があるのをご存知だろうか!?
トビタテ!留学JAPAN
それが「トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム」! 文部科学省と民間企業・団体による「官民協働」のプロジェクトであり、2013年から世界を目指す多くの学生達を実際に日本から飛び立たせ続ける「留学促進キャンペーン」による留学支援制度である。
高校生(高専生)・大学生・大学院生が対象の返済不要の奨学金で、留学費用の一部を民間企業や個人からの寄付で負担してくれる。また留学の「目的(プラン)」も学生自身で決められるので、留学先では様々な体験・学習が可能。もちろん「選考」はあるものの、その際「成績・語学力は問わない」とのことなので、留学へのハードルがグッと下がるのではないだろうか? 詳しくは改めて後述するが、「留学」をお考えの学生の皆さん、親御さんに是非とも知っていただきたい制度である。
そしてこの度、その「トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム」を活用して、実際に留学をした学生の皆さんの「留学体験発表会」が開催されたので、そちらの模様を取材してきたぞ! 実際に留学を体験した学生達が得たものとは、どんなものだったのか? これから留学を目指す方々に「トビタテ!留学JAPAN」の活動が少しでも伝われば幸いだ。
留学体験発表会(大阪会場)
「トビタテ!留学JAPAN」留学体験発表会(大阪会場)が開催されたのは、2024年11月3日(日)「立命館大学・大阪いばらきキャンパス」。
開会式が行われる大教室へ入れていただくと、そこは発表者以外にも、これから留学を考える学生や親御さんでいっぱい。学生の皆さんの目があまりにもキラキラしていて、筆者には眩しい……(直視できない)。
開会式は主催者であるトビタテ!留学JAPANプロジェクトチームからのご挨拶でスタート。スピーチからは「この制度を利用して積極的に海外へ飛び立つ学生が増えてほしい」「多様な体験を個性として発揮してほしい」という、大人からの熱い思いが伝わってくる。この開会式で、気持ちを新たにした発表者も多いはず。またこれから留学を希望する学生達は、ワクワクした気持ちがより一層高まったことだろう。
開会式後は発表者のグループ毎に小教室へ移動し「留学体験発表会」へ。どの教室も観覧の方々でいっぱいだったが、筆者は「高校生等部門 ルームB」にお邪魔することにした。ちなみに各教室では、本プログラムに寄附する支援企業などから「審査員」が控えており、優秀な発表には表彰もある。
個性あふれる留学体験発表!
いよいよ「トビタテ!留学JAPAN」による実際の留学生による「留学体験発表」が開始。
恥ずかしながら、まず初めにここで正直に申し上げおくと……「高校生の発表」と聞いてちょっと舐めていた!! これに関しては本当に土下座で謝罪したい!! 約20名の発表を拝見したのだが、いずれも完成度の高い堂々とした発表だった。その辺の社会人のプレゼンより優秀じゃないか……?
教室のスクリーンに映し出される資料も全て学生の自作、スピーチ原稿も自ら書いたものだが、発表方法もただただ原稿を読み上げるだけでなく、各人個性豊かな表現で自身の体験や思いを目一杯に伝えてくれる。留学先での体験も多種多様、非常に見応えある発表だったぞ!
ここで約20名の発表を全てご紹介するのは難しいので、個人的に気になった発表をいくつかピックアップ!
足立英加さん
「和牛」を強く愛する足立さんは、「畜産業」について学ぶためにアイルランドに留学。アイルランドの畜産に関する発表に加え、日本の「和牛」に対する熱い思いには驚き! 普段我々がそれほど意識せずに食べている牛肉の違いも細かに研究し、美味しい「和牛」が如何に複雑で丁寧に生産されているかを伝えてくれた。高校生くらいの年代だと、なかなか関心を抱くことがない「一次産業」に対するその探究心は、日本の「食」を守っていくという意味でも非常に心強い!
シュルンツェ志奈さん
シュルンツェさんはアメリカへ留学し、アートと社会の関係性を考える学習をしてきたという。元々、日本でも社会問題を訴えるポスター制作などもしており、そのことを深く考えるために留学をしたとか。自作のポスターも提示しながらの発表もさることながら、会場へ質問を投げかけたり、時には大きなアクションを交えての自由な表現で発表する姿が眩しかった。留学経験が自らの活動(ポスター制作等)への自信になったんだな、というのが現れていて天晴れ。
天津晶乃さん
天津さんは子供の頃に虐待、両親の離婚等、いわゆる「恵まれない家庭環境」で育ったという境遇。自らのことを「ビリギャル」と称し、経済的にも困窮していたとのことだが、一念発起「トビタテ!留学JAPAN」の制度を活用して、スリランカ民主主義共和国へ留学したという。プレゼン資料もギャル風のデザインで遊び心に溢れており、楽しく明るいサービス精神に溢れた発表が印象的だった。様々な理由で「留学は難しいかも……」と考える学生に勇気を与えたに違いない。
奥田梨世さん
自身も「ろう者(聴覚障がい者)」である奥田さんは、日本社会での「ろう者」への理解促進を考えるために、アメリカへと留学。日本とアメリカでの「ろう」を取り巻く環境の違いを学んだという。発表も手話通訳を介しながらであったが、すごく自然で堂々としたものだった。奥田さんは「自身が『ろう者』のロールモデルになりたい」と話していたが、奥田さんのチャレンジは、きっとこの先、日本で「ろう者」と健常者が共に生きていく未来への、大きな道標になるだろう。
小屋悠希さん
小屋さんは高専に通う「建築」大好き学生。建築意匠を学ぶために選んだ留学先はイギリス。小屋さんの発表はとにかく「建築愛」がほとばしるもので、聴講者を飽きさせないマシンガントークで進行。イギリス各地の建築物における「歴史」や「宗教」からの影響を、とても面白く紹介してくれて、「へぇー、なるほどー!」の連続。小屋さんのような人材がこれからの日本建築でもその知識を活かしてくれるなら、「観光立国」としての日本の魅力も更に上がるのでは?
松田眞生さん
絶滅危惧種である「ハシビロコウ」の繁殖の可能性を研究しにアメリカへ留学した松田さん。現地でハシビロコウに関する学習をし、絶滅を避ける方法を模索したことを発表していたのだが……どうもその発表中のハシビロコウのスケッチが上手い!? それもそのはず、松田さんは学校では「美術コース」を専攻しており、アートの力によってハシビロコウを絶滅から救いたいのだという。そういう視点があったか!! 美術によってハシビロコウや命の大切さを伝えたいという発想の驚きと、社会への貢献の形は様々だな、と恐れ入った次第。
▲実際に松田さんが描いたハシビロコウの絵
そんなわけで、前述の通り全員の発表は紹介しきれなかったものの、いずれの皆さんも、それぞれ個性豊かな視点からのプレゼンで、計2時間以上に渡る「留学体験発表会」もあっという間に終了。「留学」という言葉だと「アカデミック」に思われるかもしれないが、それ以上に皆さんが純粋に「異文化体験」を楽しんできたことが伝わる発表会でした。何事も全力で「楽しむ」っていうのは大事だなと感心しきり。
それぞれの発表後には審査員からの質疑応答もあるのだが、こちらも皆さん堂々と受け答えをしていて……これを審査・表彰するのかぁ〜……。審査員の方はさぞ悩ましいことだろう。審査する立場じゃなくて良かった〜。
表彰・交流会
充実の発表会からしばらく時間をおいて、いよいよ表彰式。審査員の方からの総評・講評はと言うと……。
「審査する意味があるのかな? っていうくらい、皆さん素晴らしかったです。大人になって社会に出ると『妥協』と『惰性』の連続。今日の皆さんの発表は『妥協』や『惰性』が一切なく、チャレンジする・世界に飛び出していく、という精神に感動しました。これなら日本もまだまだ明るいんじゃないかな」
いや全くその通り! 筆者自身も何となく目の前の仕事をこなすだけのような「大人」になってしまった一人として、まだ若い学生である皆さんの熱意や前向きさには大きな感銘を受けた。筆者の拝見していた「高校生等部門 ルームB」での表彰者は計6名であったが、全員優劣をつけることができない程、大きくかけがえのない経験をしたことは間違いない。この中の誰かの発表を見て「留学してみたい!」という気持ちを強くした観覧の学生も、たくさん居たはずだ。
今回の留学体験発表会でも、実は「トビタテ!留学JAPAN」の支援を受け過去に留学した「トビタテ生」が運営に関わっていたり、この発表会を見た学生さんが新たに留学を目指したり、そういった好循環も素晴らしい。
表彰後には、発表者の皆さんによる「交流会」もあり、その様子も少し拝見させていただいたのだが、さながら皆さん「戦友」と話すかのよう。それぞれ全く違う目標・違う留学先ながら、「トビタテ!留学JAPAN」を介して様々な人と繋がれるというのも、また一つの大きな財産になるのだろう。
2025年度 トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム
さて、ここまでお読みいただいて「留学してみたい!」という気持ちが更に高まった方、また「留学したい(子供にさせてあげたい)けど、費用とか色々問題が……」という方、ぜひ以下をご参照いただきたい。2025年度の「トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム」の募集が始まっているぞ!
2025年度の募集は「大学生等対象:250名」「高校生等対象:700名」。
留学にかかる奨学金は民間企業や個人などからの寄付によるものなので、返済不要!
もちろん対象に選ばれるにあたっての審査はあるものの、前述の発表レポートの通り、留学の目的やプランも思い通りに設定できる上、学校での成績や語学力は問わないという、非常に自由度が高いプログラムである。留学期間も【高校等対象】は14日以上、【大学生等対象】は28日以上という、短い期間での計画でもOK!
また過去に約1万人を輩出している同プログラムなので、サポートも充実。何かとハードルを高く考えてしまいがちな「留学」であるが、これなら気軽に応募してみてもいいのでは!?
どんなに些細なキッカケや思い付きでも、そこに何かの「芯」があるなら、若い時代に海外に飛び出て実際に体験してみるということ自体が、自分一人のみならず、社会に大きな変革をもたらす一石になるのかもしれないぞ! 語学力も経済力も必要ない。「トビタテ!留学JAPAN」が応援するのは君たちの情熱なのだ。
募集要項等、詳しくは下記公式WEBページをご覧いただきたい。
▼新・日本代表プログラム 大学生等対象
https://tobitate-mext.jasso.go.jp/newprogram/uv/
▼新・日本代表プログラム 高校生等対象
https://tobitate-mext.jasso.go.jp/newprogram/hs/
最後に「トビタテ!留学JAPAN」プロジェクトディレクターの方からお話を伺うことができた。
“とにかくチャンスがあれば手を挙げてください! 「トビタテ!留学JAPAN」は後2回実施することは決まっているんですが、実はその先はまだ決まっていません。なので、このタイミングを逃さずチャレンジして欲しいです。日本全国で見ても、これほど大きな奨学金のプログラムはないので、そういう意味ではかなりのチャンスです。まずは「海外に出てみる」ことが大事。ファーストチャレンジ、「ホップ・ステップ・ジャンプ」の一歩目を踏み出してもらえたら嬉しいです。”
昨今の世界情勢を鑑みても色々なことが起こる世の中ではあるが、未来をより良い社会にするために、筆者も含めて「大人」達は、まだまだ若い皆さんに大いに期待しています! 日本を飛び出して海外で活躍するのも良し、留学の経験を日本で活かすも良し。「世界」の全ては君たち次第。
さぁ、チャンスは今ここにあるんだ。一歩踏み出してみないか!?