三四郎のオールナイトニッポン0(zero)を語る【小豆のお笑い豆噺:1】|Q-WEST(クウェスト)・関西カルチャー探求WEBメディア

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三四郎のオールナイトニッポン0(zero)を語る【小豆のお笑い豆噺:1】

2021. 07. 25 Sun

ご縁があり、こちらで”お笑い”をテーマに絵と文章を書かせていただくことになりました。と言っても、コアなお笑いファンではないのでライトにしれっと読んで下さいという逃げの前置きをしておき、初回はお笑い好きになった原点である深夜ラジオのお話です。

現在、ニッポン放送をはじめ全国36局ネットで金曜日深夜3時から放送しているラジオ「三四郎のオールナイトニッポン0」(以下「三四郎ANN」)。
三四郎とは、滑舌が悪いツッコミの小宮浩信と、飄々とボケる相田周二のコンビだ。

三四郎ANNを表現する際によく使われるのが「休み時間に教室でクラスメイトが喋っている雰囲気」といった例えである。
2018年、オールナイトニッポン50周年の年に寄せた相田の言葉が何よりもそれを物語っている。
『オールナイトニッポンは、「相方」が「友達」に戻る時間。』
数年経った今でもこれを超える一文は見当たらない。ニッポン放送の床に彫って未来永劫残してほしい。もしくは瞼の裏に刻んで目を瞑ればいつでも見える位置に置いといてほしい。それくらいリスナーにとっても大事にしたい言葉なのだ。

と、相田のこの言葉がフィーチャーされがちだが、同じくこの時に小宮は『オールナイトニッポンは、コミュニケーションツール。』という言葉を寄せている。
人見知りな小宮が、相田という信頼する相方と、リスナーであるファンと、しがらみなく力を抜いて交流出来る場だと言ってるのだとしたら感慨深い言葉なのかもしれない。知らないけど。

三四郎ANNを語る上で、「信頼」というキーワードが頭に浮かんだ。

先程も書いたように、三四郎ANNは「クラスメイトが喋っている雰囲気」なのだが、何故そうなるかというと、一つのトピックを「〇〇なんだってさ~」と挙げた所に「じゃあこれは?」と(主に小宮が)突拍子もない提案及び質問を投げて話が転がっていく。
一瞬話題となったゾンビ蝉の話からは、
「僕が蝉になったらどうする?」
「蝉だったら飼うよ」
175cmの蝉でも青ジャケットと眼鏡かけたらいけるだの、ラジオならやれるだの、真剣に「小宮が蝉になった場合」の対処法を話し合う2人。
“知らねぇよ”で終わるような一蹴する反応があまり無い。渋々でも一度は受け取る。相田が受け取ってくれると信頼してるから小宮の自由度が上がる。脳みそをほぼ使っていないような会話なので、聴いてる側もほぼ使わずに済む。まさに日常生活の休み時間。
2人の関係は、どんなくだらないやりとりにも付き合ってくれる友達といった感じだ。
そして唐突に始まる「ごっこ遊び」も友達同士たるものそのものである。
(物が無いのに)エアルービックキューブ大会やエア早押し大会のような、友達の家でちょけて遊んでいるような時間が三四郎ANNには多い。

リスナーからのメールを読む時にもその信頼が窺える。どんなネタメールであっても、相田の迅速な補足と豪快な笑い声は、面白さの魔法を更にかけてくれる。その横から小宮が重ね、最初のメールから派生し思わぬ方向に話が拡がることも少なくない。

ゲストを呼ぶ回もあるのだが、三四郎の2人は人の良いところを引き出すのが上手いと思う。リスナーは三四郎ANNに出たゲストの殆どを好きになっていることだろう。
そんな中、年に一度は必ず呼ぶ恒例ゲストこと、なかやまきんに君。その伸び伸びとしたきんに君の様子は、三四郎を信頼しているからこその姿に他ならないと思っている。

リスナーにしろゲストにしろ、スタッフ、そして小宮は相田、相田は小宮に対して、「こいつなら一緒に面白くしてくれる」という信頼があるのだろう。ただ、ベタベタとした熱さはない。何なら皆割とドライだ。しかし無意識のうちにその信頼はいつも何処かにある気がする。そしてそれは経験と知識が増え、年齢を重ねた今の三四郎ないしこの先の彼らこそ最も面白くなっていくのだと思う。

昨年コロナ禍において、番組イベントが一度中止になった際は流石に苦しい胸中に触れざるを得なかったが、それ以外では三四郎の呑気でくだらないラジオはいつ何時も変わらなかった。
様々なエンタメに影を落とした自粛期間中、毎週金曜日に変わらずある笑いの時間にどれほど安心しただろう。そこにもやはり「三四郎の2人が笑わせてくれる」という信頼があったからだ。

もし興味がわいたら軽い気持ちで聴いてみてほしい。
最近はアプリでラジオが簡単便利に聴ける。
更に三四郎ANNの番組ファンクラブでは過去放送のアーカイブに加え、ファンクラブでしか聴けない特別なラジオが何度でも聴き放題だ。すごい。入ろう。

笑いの嗜好は人それぞれなので、合わない人がいるのも勿論仕方がない。
元・テレビ東京のプロデューサー、佐久間宣行氏は「テレビ番組で面白いと人気が出るけど、ラジオ番組で面白いと好きになる」と言っていた。
だからもし、「三四郎のオールナイトニッポン0」を好きになったらきっと、芸人「三四郎」の事をずっと好きになる。

イラスト+文:小豆
Twitter:@Kmame
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