「在庫をどうにかしたい(笑)」【SSWアキラのアキラめない日々:45】|Q-WEST(クウェスト)・関西カルチャー探求WEBメディア

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「在庫をどうにかしたい(笑)」【SSWアキラのアキラめない日々:45】

2024. 03. 01 Fri

どうも皆様おはようございます。
またはこんにちは、こんばんは。
シンガーソングライターのアキラです。

アキラ情報。詳しくはX(旧Twitter)をチェック。
▼アカウントはこちら
https://twitter.com/akira_utauhito

ライブ会場に足を運んで下さるお客様でも実は知らない人がいると思うが、なにを隠そう私は小冊子を出版している

知らなくて当然。最近は物販に並ぶことすら減ってしまった。

会場の物販で並べなくなったのは、単純に場所をとるからだ。その小冊子は「毎週新曲企画」と連動していて、全12冊ある。知らない人は、まずその企画からチェックしてみてほしい。

▼毎週新曲企画こちら

で。なぜに今さらこんな話をするかと言うと、困ったことに在庫が山程あるからである。
正直、ちょっとでも興味を持ってもらわないとどうしようもない…。

なので今日は、その中からひとつ転載してみようと思う。読んだことのある人も、改めて読み返してみてほしい。

私が個人的に好きなのは、アルバム「アクアマリン」に収録されている「パズル」という曲に基づいたエッセイだ。少し長いが、ダラダラと読んでみてほしい。

ちなみに楽曲はこちら。
さらにちなみに、この時の私は髪型が変である。

いつだったかのラジオだかなんだかで話したと思うけれど、とにかく私の曲は「立ち止まって振り返りがち」だし「拾い集めて積み重ねがち」である。歌詞を読み返してみると、もう自分で笑っちゃうくらいこの表現は多い。しかし、そうだとしても

「そんなこと言ったってしょうがないじゃないか」

と、鬼ばかりがいる世間を渡り歩くえなりかずきのように言いたくなってしまう。

そう、しょうがないのである。度々同じ表現が出てくるということは、それすなわち人生観であり、自分自身の指針となる生き方なのだから。

遠回りは、いろいろなものを見て経験を積んだ時間だから結局遠回りではないかもしれないし、躓いた時はなぜ躓いたのかを考察して次に生かすための時間だったりするかもしれない。ならば、無駄なことなどひとつもない。だから、お腹を抱えて笑った時も、目を泣き腫らして迎えた朝も、喧嘩して落ち込んだ日も、どうぶつけていいのかもわからないほどに物悲しい夜も、全てが今の自分を形作る大切な1ピースである。

しかしこれは、結果として「そうなるかもしれない」というだけなので、結果論だ。要は自分の捉え方次第である。

私は幼少期、レゴブロックが大好きだった。裕福な家庭ではなかったのであまり多くは買ってもらえず、「ロイヤルキング城」のセットを持っている友達が羨ましかった。しかし、アキラ少年は腐らずに遊び方を模索しては自分だけの世界に没頭していた。少ないブロックで組み立てた張りぼてのお城。そこに集まる兵士たち。数が少ないので選ばれた者しか乗れない馬。レゴの人形の上に学校で作ったスライムを置いて、「未知の生物に取り込まれた一般市民」なんて少しグロテスクな表現をしたりもしていた。ほかにも粘土細工やジグソーパズルにハマって、ひたすらに家で一人遊びに勤しんでいた時期がある。なんだか暗いこどもだなぁ。

今もそうかもしれないけれど、私は妄想族だ。気付けば脳内で話が広がっているし、思わずそれが口に出てしまって周りをびっくりさせてしまうこともある。
そういえば中学生くらいの頃に、忘れられないこんな話があった。

………………………………………

鳥インフルエンザという病気が、あらゆるところで猛威を振るっているらしい。かなり難しい病気らしく、世界中が対処に困っているという。「疑わしきは罰せよ」のような、恐ろしい話もちらほら聞こえるくらいに、大勢の人がその脅威に怯えている。

しかしまぁ、周りの人たちがひそひそと噂話をしているくらいで、今の私には関係がない。残念なことにテレビの向こう側では連日悲しいニュースが流れているが、まるで実感の持てない話だ。私は至って健康だし、私の妻も元気の塊のようだ。近頃はなかなか会うことができていないが、心配していては逆に「自分の役割を全うしなさい」と怒られてしまうくらいだろう。つんと尖らせた口元を思い浮かべる度に、愛しさに笑みが零れてしまう。笑われてもしかたない。それくらい私は、彼女を愛してしまったのだから。

いつものように朝を迎え、朝食を済まそうかなぁとぼんやりと考えていると、なにやら周りが騒がしい。いつもの朝のはずなのに、いつもとは違うなにやら不穏な空気が漂っている。胸のざわめきの原因はわからないが、なにかが違う。

あたりの様子を伺おうとしたその瞬間、私の身体は宙に浮いた。そして投げ飛ばされた。急に暗くなる視界。冷たいビニールの肌触り。次々に自分の身体に降って来るルームメイトたち。その瞬間、私の脳裏には想像しうる最悪の状況が浮かんだ。

「疑わしきは罰せよ」

そう、とうとう私のところにも殺処分の命が下ったのだ。発症の原因となった私たち鶏を、全て処分してしまうという悪魔の所業。しかも生き埋めだ。こんな残酷なことがあっていいのか。私は力の限り叫んだ。

「待て!待ってくれ!あんまりだ!私は健康だ!見ろ、トサカだってしおれちゃいないし、羽の艶も申し分ない。私は病気じゃない!」

わかっていた。人間たちには届かない。私たちの鳴き声なんて、少し音量の大きい目覚ましくらいにしか思っていないのだろう。それでも私は必死に叫び続けた。

結局、再び地面に着地した感触を体が感じる頃には、自慢の羽はグシャグシャになり、なんともみすぼらしい姿になっていた。同じ袋に詰め込まれた仲間は、すでに数匹息を引き取っているようだ。
諦めて項垂れたトサカが目元を隠した。すでに暗闇なのだから、同じことだ。しかし、トサカが遮った視界の中で、私はふと我に返った。

「妻は?私の妻はどこだ!」

そうだ。なぜすぐに気付かなかった。離れの鶏舎に住んでいるとはいえ、彼女だけが無事な補償なんてない。私は最後の力を振り絞って声をあげた。

「私はここにいる!お願いだ届いてくれ!ほかになにもいらない!妻に、妻にもう一度私の声を届けてほしい!神よ、どうか最後の願いを叶えてください!」

全てがどうなってもいいほど、取り乱して私は叫んだ。すると、

「あなた・・・」

小さく、本当に小さく声が聞こえた。しかしそれは、私の胸の中に大きく反響し、全身に響き渡った。聞き間違えるわけがない。今一番聞きたかった、彼女の声だ。

「おまえ、いるのか・・・?」

私は暗いビニールに話しかけた。

「えぇ、いるわ」

暗闇から返事が聞こえた。絶望の中に鳴り響く、教会の鐘のようだ。

「探してくれてありがとう。でも、どこにもいかないわ。あなた、さみしがりやだもの。一人にしちゃ、かわいそうだから」

目の前の暗闇が、羽の形に膨らんだ。彼女が隣の袋越しに、羽を押し付けている。

「もうどうしようもない。でも、隣にいるじゃない。最期の最期まで」

私は、みすぼらしく乱れてしまった羽を、彼女の羽にそっと重ねた。もう言葉はいらない。目の前には暗闇しかない。苦しい思いをするかもしれない。でも、隣には君がいる。それだけで、なにも怖くなんかない。

次に生まれ変わる時がきたら、一緒に白鳩になろう。誰も傷つけることなく、誰かの幸せを祝福する為に、チャペルから飛び立つんだ。きっと、自分たちも幸せに違いないさ。

私は、そっと目を閉じた。

………………………………………

という内容の妄想を鳥インフルエンザのニュースを見ながら脳内で繰り広げ、一人で泣いたことがある。この妄想力は、作曲に役立っているかもしれない。ほら、どう生きたって、全てはきっと無駄じゃないのである。

結果論かもしれないが、要は自分の捉え方次第。大丈夫。
いつかきっと、無駄じゃなかったと思える日がくる。
最期の1ピースを埋めるまで、どんな絵が完成するかわからないのだから。

よかったら、「月間lyrics」買ってください……

読んで下さりありがとうございました!
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アキラ

文:アキラ(大阪を拠点に活動中のシンガーソングライター。最新情報は下記SNSをチェック!)
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YouTube:@ssw861
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