「クリスマスの話」【SSWアキラのアキラめない日々:38】|Q-WEST(クウェスト)・関西カルチャー探求WEBメディア

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「クリスマスの話」【SSWアキラのアキラめない日々:38】

2023. 12. 22 Fri

どうも皆様おはようございます。
またはこんにちは、こんばんは。
シンガーソングライターのアキラです。

アキラ情報。詳しくはX(旧Twitter)をチェック。
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https://twitter.com/akira_utauhito

世の中はクリスマス一色である。
そりゃあもう間違いなくクリスマス一色である。

SNSを開けばサンタの格好をした女の子たちがキャッキャウフフ、それを見る男どもの反応もキャッキャウフフ、街を歩けば浮かれたメロディーにノッたカップルがキャッキャウフフで、夜の公園ではツンと澄んだ冷たい空気の中恋人たちがキャッキャウフフである。

じゃかまっしゃいわぁぁ!!
なんやぁキャッキャウフフて!
キャッキャウフフてぇぇええ!!
絶好調真冬の恋スピードに乗っとるがなぁ!

と思わず声を荒げてしまうほどに、世の中はクリスマス一色である。羨ましいとかではなく、事実として世の中は年の瀬である。別に羨ましいとかではないのである。あるったらあるのである。そこ重要。
はいここテストに出まーす。

さてさて唐突ですが、皆様の「人生で最高のクリスマス」っていつでしたか?

家族と、友達と、恋人と。過ごす人は違えど忘れられない夜のひとつやふたつはあるのではないだろうか?いや、もしかするとそれは今年のクリスマスになるのかもしれないけれど。

私はといえば、あまり記憶に残っていることもないので過去のブログを引っ張ってこようと思う。今はもう「過去一番」という記憶ではないかもしれないが、読んだことのない人も一度読んだことのある人も、まぁ1回読んでみてちょうだいな。

中学2年の体育祭のあと、私はCさん(仮)という子とお付き合いを始めた。それまでももちろん仲のいい友達としての関係はあったが、お付き合いを始めたことにより自分の意識は大きく変わっていった。

吐く息は白く、年末も近い冬のこと。どこか街全体が浮かれた雰囲気を醸し出し、イルミネーションが色鮮に街を彩る。テレビを点ければ竹内まりあが鶏肉の宣伝をするし山下達郎がサイレンナ〜イウォ〜イェ〜である。つまり、クリスマス間近のこと。

その時までまったく自分には縁のない季節であり、「おかんはいつまでクリスマスプレゼントをくれるのか…」くらいのことしか考えてなかった私だが、これからは違う。そう。私には彼女がいるのだ。プレゼントをもらう側だけではなく、あげる側でもある。

えらいこっちゃである。なにせ今までの自分ときたら、プレゼントどころか買い物もほとんどしたことがない。自分で買うものといえば少年ジャンプと好きな漫画の単行本くらいのものである。服なんかも、兄のお下がりか母親が買ってくるジャスコだかイオンだかの服ばかりだった。

それほどお小遣いをもらっていたわけではない私は、お昼ごはん代としてもらっていた小銭を貯めに貯めた。予算は5000円程度。自分としてはかなりの大金。普段は持つことのないお金だ。それもこれも、不慣れな中での「プレゼント大作戦」の下準備である。

先立つものは用意できた。さて、どうする?

それはもう悩んだ。ハゲそうなくらい悩んだがなにも出てこない。だって中学生アキラさんは、お買い物なんかほとんどしたことないんだもの!!このままではプレゼントもできないやつだと思われてしまう!!!
と、しょうがないから自分自身にリボンを巻きつけてやろうかと考えていた時、救世主が現れる。

「アキラ、一緒にクリスマスプレゼント買いに行かん?」

そこには同級生のMくんとKくんがいた。二人とも彼女がいて、どうやら同じような悩みを相談し合っていたようだ。

神よ!あなたはそこにいたのか…!

私はお告げを受けた聖母マリアのように跪きたくなった。一人じゃない。そう、私は一人じゃなかった!

数日後、男3人で近くのショッピングモールに出掛けた。いざ行かん戦場へ。勝ってくるぞと勇ましく!な気分である。
しばらくお店を見て回るが、なにがいいのかわからない。するとMとKが話しているのが聞こえた。

「何買うつもり?」
「指輪とか、アクセサリーかなぁ」

その会話に、お菓子詰め長靴のオモチャを持つ私の手は震えた。なんだって!?指輪!?アクセサリー!?そんな、大人じゃあるまいし!そんな馬鹿な!まだ10年は早いのではないか!まさか、知らない間に皆の感覚はそこまで成長していたのか!と。
第2候補であったバーバパパのビーズクッションに一瞥くれて、私は会話に混じった。

「そうやなぁ〜まぁ妥当やなぁ」

お菓子詰め長靴とバーバパパで悩んでいた私は何食わぬ顔で話を合わせ、アクセサリーを見に行くことにした。断っておくが、もちろんジュエリーショップのような場所ではなく、雑貨屋にあるようなアクセサリーである。

しばらく一緒になって眺めているが、デザインは相当な数あった。色や形状も様々。しかし、一番大事なことを忘れていた。

そう、指輪にはサイズがあるのだ。合わなければ入らなかったりガバガバだったりする。二人はどうにかして調べてきたようだ。くそぅ!抜け駆けじゃないか!俺を笑いたいんだな!笑えよ!ドちくしょう!
と脳内で必死に戦ったが時すでに遅し。私は仕方なく二人に相談することにした。すると、どちらからともなく

「いつも手ぇ繋ぐやろ?なんとなくわからん?」

と、呆れるように言われた。
正直、絶句である。ぜっく。
その頃にはもちろん手くらい繋いでいたわけだが、そんなこと考えたこともない。そうか。この二人は何食わぬ顔のまま繋いだ手をじろじろ観察していたのか。そうだそうだそうに違いない。やだわやだわハレンチだわやだわ!

ん〜、ともじもじしている私に、二人はさらに続けた。

「どうしてもサイズが合わなかったら、指輪はネックレスにできる」

なるほど!そんな手があったか!当時の私にはセーテンのヘキレキである。それから私は深く悩まずにひとつの小さな指輪を買った。ほんとはお揃いにするべきなのかどうなのか悩んだが、予算の関係上、どっちにしても一つしか買えなかった。

男3人できゃっきゃと買い物をして、最寄りの駅に帰る頃にはすっかり日が暮れていた。辺りは暗く、冷たい風は余計に冷たく感じた。並ぶ街頭の横には、お金持ちの一軒家のイルミネーションが連なっていた。

友人と駅で別れ一人自転車を漕いで家に向かっていると、向かいから一台の自転車がやってきた。お互いにライトを付けているもんだから、なかなか顔が見えない。すれ違おうと軽くハンドルを切った瞬間、自転車のライトが顔を照らした。

「アキラ?」

なんと、すれ違ったのはCさんだった。自転車のハンドルに小さな買い物袋をぶら下げて、いつものように落ち着いた黒っぽい私服を着ている。どちらかというとサバサバした性格で、制服以外ではほとんどスカートを履かなかった。今日もジーパン姿だ。
なんという偶然。私の手には先程買ったプレゼントを持っている。ちなみに、その当時こどもたちにもケータイ電話が普及し始めた頃だったが、Cさんは持っていなかった。どうするのが正解なのか…?

とりあえず二人でCさんのマンションの下に行き、話をすることになった。

「なにしてたん?」
「ん?あぁ、男3人でちょっと買い物に。Cは?」
「私も、〇〇ちゃんと買い物に…」

手に持っているプレゼントを悟られないように気を使いながらCさんの話を聞いた。やはりクリスマス当日まで待つべきだと思ったからだ。しかし、Cさんから思いもよらない言葉をもらった。

「クリスマスプレゼント。今日買ってきたから」

Cさんは小包を袋から取り出し、私に渡した。開けてほしいとせがまれ封を開けると、中身にはマーブル色のマフラーが入っていた。

なんと、二人は偶然同じ日にクリスマスプレゼントを買いに行き、偶然その帰りに出会ったのだ。これはもう今しかないと思い、私もその場で小さな指輪を渡した。人生で最初の、「生きててよかった!」と思えるクリスマスだった。

私の渡した指輪は、サイズは合ったが嵌めて学校に行くわけには行かず、ネックレスとして活用された。学校でちらりとチェーンが見える度に、私はなんだか誇らしかった。

うぅ、思い出すだけてなんだか胸が苦しいなぁ。
動悸か?いやいや違う。そうじゃなくて。
あの頃の甘酸っぱさといったら、なんでこんなにも心地よい痛みなのだろう。純粋で純白で、濃密なのに一瞬で過ぎ去った日々に想いを馳せる。

最終的にその指輪は私のもとに返ってきてしまうわけだが、その話は別の機会に。

読んで下さりありがとうございました!
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アキラ

文:アキラ(大阪を拠点に活動中のシンガーソングライター。最新情報は下記SNSをチェック!)
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YouTube:@ssw861
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